MIT Sloan×東南アジアという選択肢―Asia School of BusinessのEMBA説明会に参加して感じたこと
先日、Asia School of Business(ASB)のMBA・Executive MBA説明会に参加する機会がありました。
正直に言うと、私自身、それまでASBについて詳しく知っていたわけではありません。
しかし、今回初めてプログラムの内容を詳しく聞き、特にExecutive MBAについては、
「東南アジアでEMBAを検討するのであれば、かなり有力な選択肢ではないか」
という印象を持ちました。
特に印象に残ったのは、授業のクオリティ、マレーシアというロケーション、そして非常に高いコストパフォーマンスの3点です。
Asia School of Businessとは
Asia School of Business(ASB)は、2015年にMIT Sloan School of Managementとマレーシア中央銀行(Bank Negara Malaysia)の連携によって設立されたビジネススクールです。
まだ歴史の浅い学校ではありますが、MIT Sloanとの強い関係性と、東南アジアという地域性を組み合わせた独自のポジションを築いています。
今回参加した説明会でも、「欧米のビジネススクールをアジアにそのまま持ってきた」というより、東南アジアを実際のビジネスフィールドとして学ぶという姿勢が強く感じられました。
1.授業の40%をMIT Sloanの教授陣が担当
まず、私が最も魅力を感じたのが教育内容です。
ASBのExecutive MBAは16カ月のハイブリッド型プログラムで、授業の40%をMIT Sloanの教員、60%をASBの教員が担当します。
さらに、プログラムにはMIT Sloanでの3週間のImmersionも組み込まれています。
単に「MITと提携している」という名前だけの関係ではなく、実際にMIT Sloanの教授からかなりの割合で授業を受けることができるという点は、大きな特徴でしょう。
今回の説明会では、実際にEMBAで学んでいる学生の方からも話を聞くことができました。
特に印象に残ったのは、MITの教授だから単に世界最高水準の理論を教えるというだけではなく、日本企業の特徴や日本特有の組織文化についても理解したうえで、実務への適用方法まで議論しているという話です。
EMBAで重要なのは、知識そのものだけではありません。
「授業を終了した時点から、自分の仕事で即どのように使えるのか」
という実践性が非常に重要だと私は考えています。
ASBではBusiness Practicum、EMBA Southeast Asia Experience、Capstone ExperienceなどのAction Learningもカリキュラムに組み込まれており、実際の企業課題と結びつけながら学ぶ設計になっています。
その意味でも、教育面については非常に興味深いプログラムだと感じました。
2.「マレーシアで学ぶ」ということ自体に意味がある
もう一つ興味深かったのが、マレーシア・クアラルンプールというロケーションです。
MBAやEMBAというと、どうしても米国や英国、欧州のトップスクールが最初に候補に挙がりがちです。
しかし、これからの世界経済を考えると、東南アジアそのものを学びのフィールドとすることには大きな意味があります。
マレーシアでは、半導体、デジタルインフラ、金融などへの投資が進んでおり、シンガポールを含むASEAN経済圏へのアクセスも非常に良い。
公認会計士としての立場からも、マレーシア進出支援の案件が非常に増えているという点は会計士仲間からも聞いています。
ASBのAction Learningでも、マレーシアや東南アジアの企業が実際に直面している課題を扱います。
つまり、ケーススタディで新興国について学ぶのではなく、成長している市場の中に実際に身を置きながら経営を学ぶことができます。
また、マレーシアはマレー系、中華系、インド系など異なる文化的背景を持つ人々が共存する社会です。
英語も広く使われています。
「英語圏へ留学する」という経験とは少し異なり、多文化・多民族のアジアそのものを体験しながら経営を学ぶことができるのもASBならではの価値だと思います。
東南アジアを中心にキャリアを考える人にとって、クアラルンプールという立地にはかなり合理性があります。
3.非常に高いコストパフォーマンス
そして、個人的にかなり驚いたのが学費です。
ASBのExecutive MBAの学費は、MYR180,000、説明会資料上の日本円換算で約700万円です。
もちろん、700万円という金額自体は決して小さくありません。
しかし、欧米の主要Executive MBAの学費水準や、渡航費、現地での生活費まで含めて考えると、相対的なコストパフォーマンスはかなり高いと感じました。
しかも、MIT Sloanの教授陣が授業の40%を担当し、MITで3週間学ぶ機会も含まれています。
「教育の質に対して、いくら支払うのか」
という観点では、ASBはかなり強い競争力を持っていると思います。
なお、OxfordのEMBAは円安とインフレの影響もあり約2,000万円となっています。
一方で、「何をEMBAに求めるのか」は冷静に考える必要がある
ただし、ここは重要です。
私は、すべての人にASBを勧めるわけではありません。
EMBAを選ぶ際には、授業の質だけではなく、ブランド、ロケーション、クラスメート、卒業生ネットワーク、費用など、複数の要素を考える必要があります。
そして、人によって何を最優先するかは大きく異なります。
私自身、OxfordのExecutive MBAを経験しましたが、クラスメートや卒業生を含めたグローバルネットワークという観点では、OxfordやHarvardなど、長い歴史を持つ世界的なビジネススクールには依然として非常に大きな蓄積があります。
これはASBの教育の質が低いという話ではありません。
ASBは2015年設立の非常に若い学校です。
一方、Oxford Universityには長い歴史があり、世界各国、さまざまな業界に巨大なAlumni Networkが形成されています。
この「ネットワークの厚み」は、短期間で作れるものではありません。
例えば、ASBとOxfordの両方に合格したらどう考えるか
少し極端な例を考えてみます。
例えば、中国を含むアジアのビジネスパーソンが、Asia School of BusinessとOxford Saïd Business Schoolの両方から合格を得たとします。
金銭的な観点ではどちらでも通うことが可能とした場合、欧米出身者ではなく、あえて第三者的なアジア人という前提で考えたとしても、世界的なブランド認知やグローバルなAlumni Networkを最優先するのであれば、Oxfordに強く惹かれる人は多いのではないかと思います。
ここについては、現時点では両校の間に一定の差があると私は感じます。
ただし、条件を変えると答えも変わります。
例えば、
- 今後、東南アジアでキャリアを築きたい
- 日本やASEANから仕事を続けながら通いたい
- MIT Sloanの教授陣から直接学びたい
- 教育内容に対するコストパフォーマンスを重視したい
- 欧米だけではなく、成長するASEANのビジネス環境そのものを体験したい
という人であれば、ASBの魅力は一気に高まります。
ASBは「Oxfordの廉価版」ではない
今回の説明会を聞いて、私が最も重要だと思ったのはこの点です。
ASBをOxfordやHarvardの廉価版として捉えるべきではないと思います。
そもそも、競争軸が少し違います。
ASBの強みは、
MIT Sloanとの強いAcademic Connection × 東南アジア × 実践型教育 × 高いコストパフォーマンス
という組み合わせにあります。
これは、OxfordやHarvardとは異なる独自のポジショニングです。
特に、日本、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシアなど、今後アジアでキャリアを構築したい30代後半から40代以降のビジネスパーソンにとっては、非常に興味深い選択肢になると思います。
ASBのEMBAは実務経験8年以上が対象で、仕事を継続しながら履修できる16カ月のハイブリッドプログラムです。
日本から欧米へ定期的に移動するEMBAと比べると、物理的な負担もかなり異なります。
EMBA選びは「ランキング」ではなく「目的」から考える
今回ASBを知って、改めて感じたことがあります。
EMBA選びに絶対的な正解はありません。
単純に「一番有名な学校はどこか」だけで考えるのではなく、
「自分はEMBAから何を得たいのか」
から逆算した方がよいと思います。
世界的なブランドやAlumni Networkを最大化したいのか。
東南アジアでのネットワークを構築したいのか。
現在の仕事を続けながら世界水準の経営教育を受けたいのか。
教育の質に対する投資額を重視するのか。
その答えによって、選ぶべき学校は変わります。
今回初めて詳しく知ったAsia School of Business。
特に、「東南アジアを軸にキャリアを考えるExecutive MBA候補者」にとっては、かなり強力な選択肢の一つだと感じました。
私自身も、今後引き続き注目していきたいExecutive MBAの一つです。
